ベリタスブログBLOG

NPOベリタスからの子供の発達への意見①

2023/12/28 木曜日

  • 論文

「発達障害と愛着障害」

発達障害が13年で10倍増えているとされているが、「発達障害もどき」間違いが多く含まれていることが指摘されている(成田奈緒子2023年)。これらについて私見を述べてみたいが、」成田氏の意見は家族関係の中での影響によりそのようなことが起こっているのではないか?というのであり、親子への関係支援が大切と述べられている。ベリタスの親子支援を通しても同様な感想がる。そのような、もどきの子供へのセラピスト(治療者、支援者)の在り方を今回紹介してみたい。その一つに愛着を用いた支援の在り方があるので、これを紹介したい。子供の問題行動をPTSDを含む行動とみる立場からの視点であるがあまり知られていない。

愛着療法*1):今回は概要だけを述べる。日常臨床場面でセラピィストが愛情深くかかわることでかえってPTSDの影響を受けた子供は、過去の虐待者との歪んだ愛着形成の隠されていたものが子供との相互関係の中でフラッシュバック2)*を伴ったりし再現されている。そのようなきびしい状況においてセラピィストと以前の歪んだ愛着を修正できれば治療的ケアとなる(ランズ,M、テリ-Mリビ2005)。は、

能動的抵抗:身体的・言語的に攻撃的で懲罰的で強制的に支配するというわかりやすい抵抗。対応は、

中立的な感情的反応により、怒り、衝撃、処罰を回避して子供の態度や行為からの「引き金」を受け取らない。

②支配闘争の回避。

自己選択や事の成り行き帰結に同意

関与と固執を表現。例えば、どんなに困難でも私はあなたと一緒に我慢強くやり通す、見捨てないよと伝達。

抵抗に抵抗しない。子供の抵抗を冷静に無視する。

受動的抵抗:このような子供の抵抗はより内密でとらえがたく関係性の形成はより困難とされている。本来の自分がなく表面的に応じたり切望したりします。そして、自己憐憫、無気力、具体的には、ものを忘れる、宿題をしない、ルルを受け入れないなどの行為が見られます。これらの抵抗を打ち破る関係性を作るには、

①共感を与え、あなたのような境遇であれば誰も信じられないのはよくわかるなどの伝達

②根底にある遺棄、虐待、喪失への恐れに対して純粋な共感や関心を示しそれを認識し意味ある感情へと焦点化する。

③肯定的な枠組みによりその子供のよいところを見つけ勇気付けエンパワメントし成功と信頼へと導くなどが大切とされています。深刻な愛着障害の子供たちはセラピ上の関係に関して抵抗するのは必然であり、巻き込まれずに適切な関係ができるようになるためにはセラピィスト自身の愛着スタイルを知るなどセラピィスト自身のコンプレックス*3)を見つめていく作業が必要とされます。そのことにより初めてセラピィストは子供の安全基地として機能できるようになり、ひいては虐待児童の親や里親との安定的愛着を促進できると考えられ子供の成長は促されます。

以上、不十分がですが日常場面での愛着修復の方法についてその一部概要を紹介させていただきました。最後にテマが発達障害であるのに虐待による愛着障害をなぜ紹介したのかというと、ひとつは、発達障害と虐待による発達障害は異なる疾患であるのに、または重複している場合、DSM-Ⅵからもわかるように症状がよく似ているために混同されかねないことを述べたかったからです。乳幼児早期の虐待的環境では脳へのダメジも想定され、ADHD類似症状や自閉症の類似症状がありますが日常のケアは基本的に発達障害と対応が異なります。発達障害では、障害への対応を誤った場合の虐待などにより生じる反抗、暴力等の二次障害が問題となりこれは愛着の問題ともなります。一方、愛着障害では虐待により生じるいわば一次障害が反抗、暴力等であり、安定した居場所の獲得、愛着の形成が第一となります。私は、虐待による愛着障害を発達障害としてしまった場合問題が多くあり、その逆では問題は比較的少ないのではないかと考えています。実際成長した子供たち見ていて実感として感じられることです。

もうひとつは、EUの研究*)4(ケビン・ブラウン,2009年)において治療施設における養育と発達への危害へのリスクが今日においても指摘されていることです。これは古くからボウルビィ(1969年)等において指摘された*5)施設病の問題です。ケビン・ブラウン等は、ヨ-ロッパ33カ国、US、UKの児童施設をEU連合とWHOの協力で2年間かけて調査し、児童施設を「親あるいは親代理を持たない子ども10名以上が子どもよりはるかに少ない人数の有給養育者が提供する養育下で集団生活する場」と定義し、これらの児童施設で養育された乳幼児では脳を含めて、身体的、知的発達、社会的相互作用、情緒発達に影響を受け、しかもその影響は永続する可能性があることを述べています。これらの研究は日本の児童施設を対象としたものではありませんが、日本の児童施設で働くセラピストも児童施設自体における養育と発達への危害へのリスクに十分に注意する必要性があると思います。その場合のひとつのリスク回避の指針として愛着修復の方法は日常のケアの助けとなるものと考えられます。ところで

愛着(Attachment)とは何か?発達障害に比較して、日本では一般に知られていませんが、次回に私見を述べたいと思います。

 

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*1)愛着療法:しっかりと体系化されたものはまだ出ていませんが、愛着形成を治療に生かそうとするものです。そもそも愛着とは何かですが、愛情をもつ忘我的なケアですが。臨床的ケアにもと付き少しずつ意見を述べたいと思います。

*2)フラッシュバック:日常の子供との相互関係の中で表現されることが多い。声が聞こえる(言語的)、自分は生きる価値がない(思考的)、子供は大人の奴隷(認知的)、全身の身体の痛み(生理的)、頭痛・心臓(身体的)、突然のうつ、幻聴・幻覚様症状(精神病的)などがあるとされています。

*3) セラピィスト自身のコンプレックスの認識には、セラピィストへの成人愛着テストやケビィジョンが必須と考えられています。

*4)ボウルビ‐等は養護施設等への入所、入院がかえって原因となり、知的障害、情緒障害が発生するなど指摘した。

*)ケビン・ブラウンはイギリスノッチンガム大学心理学、児童保健学教授で現在WHO虐待センタ所長を務めています。「乳幼児が施設で損なわれる危険性-EUにおける乳幼児の脱施設の理論と方策」で児童施設への子供の委託理由を概観し、施設での養育や発達へのリスクとその回避方法を提唱しています。